後期クイーン問題 | Polyhedron

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速水が思った事を書いていきます。twitterを始めたのでこちらはほぼ廃墟かも。

ちょっとミステリの「後期クイーン問題」というのに興味が湧いて、
氷川透氏の『最後から二番めの真実』を読んだ。
推理する時の武器を選び損ねたせいで、真相にはいたれなかったけど。

後期クイーン問題とは、作品中の言葉を引用すると
『作品内世界には、論理的に唯一ありうる犯人、という存在は論理的に言ってありえない』
ということらしい。(探偵の存在じたいが事件を起こす動機になる、という問題も別に含まれているらしいが、ここでは省く)
つまり、作中で、探偵(あるいはその分身である読者)が見つけた全ての手がかりが、ある人物が犯人である、と主張していたとしても、
それらが全て、実は真犯人の残した偽の手がかりですよ、という可能性も否定できない、ということだ。

ちなみに、後期クイーン問題の根拠にゲーデルの第二不完全性定理がある、というのは誤りである。
ここで問題となっているのは単純に、
『どの手がかりが無批判に信頼してよい手がかりなのか、というのは、作品の外から与えるしかない』という程度の意味。数学でいう公理を与えるようなもの。
だから、解決方法も簡単。

探偵あるいは読者が『これはさっき作者が地の文で書いてたから正しい手がかりなんだよ』というメタ推理をしつつ手がかりを集めて推理すればいい。


地の文は真実を語る、これがミステリの公理。
じゃあ、地の文が真実を語らないのに、読者が適切な論理によって真相にいたる事が可能である作品も存在しうるか?
たぶん、存在しない。